明治 開洋社 節約 松村九助 竹内忠兵衛 磁胎七宝花瓶 其のニ 瀬戸焼

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名古屋絵付けの嚆矢、松村九助が設立した開洋社の磁胎七宝花瓶を出品致します。
松村九助が、名古屋の陶器商と共同で陶磁器の輸出販売を目的とする開洋社を設立したのは、明治11年春でした。明治12年にはニューヨーク支店を開くなど積極的活動を行いましたが、残念ながら翌明治13年春には解散することになりました。(「名古屋陶業の百年」)
松村は、開洋社解散後は、ひとりこの事業を引き継ぎますが、横浜・九谷・京都・伊万里から画工を招き、盛時には三百人の画工が松村の下で働いていたと言われ、名古屋絵付けの名を全国に広めました。

さて、出品の作品は、その開洋社が僅か二年の活動時期に欧米へ輸出した磁胎七宝製の花瓶です。開洋社の銘を持つ作品そのものが上記のような事情によって極めて稀少ですが、かてて加えて、本作は同じ時期の短期間にのみ用いられた磁胎七宝という特殊な技術で製造されています。この時期に開洋社や大日本七宝会社、明山舎といった名古屋の陶磁器販売会社と関係の深かった陶芸家が竹内忠兵衛です。本作には、竹内の銘はありませんが、同意匠の作品をいくつか竹内が大日本七宝会社や開洋社に作成していますので、竹内忠兵衛が開洋社のために作成した可能性は高いと考えます。また、松村の素地は、瀬戸の加藤杢左エ門が納めていました(上述同書)から、松村九助・竹内忠兵衛・加藤杢左エ門といった錚々たる陶業関係者が僅か二年の間に協力して作成した極めつけの稀少品と言えるでしょう。

この時期の磁胎七宝は、青や緑を地色とする作品が多いのですが、この作品は黒地の意匠であり、作品に引き締まった緊張感を与えています。また、首と脚の部分に染付文様を施しているのが洒脱です。

大きさは、高さが21㎝です。ワレ、カケ、ヒビなどの瑕疵はありません。とても綺麗な保存状態です。ただ、磁胎七宝にありがちな経年による細かい貫入が七宝部分にあります。通常の磁胎七宝は銀線をたくさん使って、磁器の上に硝子を定着させていますが、本作は意匠に不要な銀線を極力使っていませんので、それだけ貫入が入りやすくなったのではないかと推測します。
注:最近、私の説明文と写真をそのまま盗用して、格安販売を謳う詐欺サイトが増えています。私はオークションサイト以外では販売していません。騙されないよう、ご注意下さい。

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